『たなばた』

君島久子 再話・初山滋 画 福音館書店

「今日は何の日?」
「たなばた!」元気のよい声が返ってくる。
「みんなよく知っているねえ、じゃあ、今日は願いごとを短冊に書きましょう!」
ある男の子が思い出したように、
「そういえば、ぼくが去年お願いしたこと、まだ、かなえてもらってない!」
と少し不満気。
「そうなんだね、たなばたになると、みんなが一斉に神様にお願いするから、神様は忙しいのかもね!」
私は彼の質問に対してお茶を濁した。
さて、「今日のお話は・・・もうわかっているよね!そうです。『たなばた』です。」
私は毎年同じ日に同じお話をしている。
おはなし、おはなし、はじまるよ。

あるところに、おりひめと牛飼いがおりました。
おりひめは天に、牛飼いは人間の世界に住んでいました。
しかし、おりひめは人間の世界で、牛飼いとの間に2人の子どもをもうけて、仲良く暮らし始めます。ある日、そのことが天の王母様に知られてしまいます。怒った王母様はおりひめを天に連れ戻しました。牛飼いはたいそう悲しみ、天まで、おりひめを追いかけます。追いかけて、追いかけて、とうとう天の川へたどり着きました。

向こう側にはおりひめがいます。けれども川の水かさがありすぎて、渡ることができません。牛飼いは子どもたちと代わる代わる、持っていたひしゃくで川の水をくみ出しました。涙を吹きながら、夜も昼も休まず、汲み続けました。
この一部始終をご覧になっていた王母様は牛飼いを不憫に思い、一年に一度だけ七月七日の七夕の日に、天の川にかささぎの橋を架け、おりひめが牛飼いに会えるように取りはからったというわけです。

「今日のお話はこれでおしまいです。」先ほどの彼は、一人神妙な表情でうなづいている。
「先生! 願いって、神様がかなえてくれるものじゃなくって、自分でかなえるのもなんだよ!! 牛飼いみたいに一生懸命努力しないとだめなんだ!」
と。

美しい言葉で語られる物語の奥深さと子どもの感性の鋭さに今日もまた一本とられてしまった。

 

2012年7月7日
ある日の日記より