離婚を考えているあなたへ コミュニケーションは改善できます

こんにちは。香港でカウンセラーをしている藤森です。

日々の生活の中で、「離婚をしたい」とおっしゃる方に、私はたくさんお目にかかります。それは、仕事の上だけでなく、プライベートな関係の中でも、「離婚をしました」とご報告を受けることも多くなっているように思います。今回は、離婚を考えている人に、伝えたいメッセージを、まとめてみます。

一般的には、日本人の離婚率は低いと言われています。その理由の一つは、日本人にとって、結婚は、金銭や子育て生活の安定であり、それを継続すること自体が大切な目的だと見なされている傾向があるからであると、私は感じています。実際、夫婦間の愛情関係を軸に、結婚生活を継続させるかどうかを判断する多くの欧米人クライアントに対し、日本人クライアントは、経済的安定や子どもを育て上げることを理由に、離婚を躊躇するケースをたくさん見ます。かつて、「日本人の離婚率が低い理由は、結婚を終身雇用と考えているからなんだってね」とアメリカ人の上司に言われたことがありました。「終身雇用」とは、よく言ったもので、まさに「一度就職したら、勤め上げる」。その対価として、経済的基盤や安定が得られるという取り決めです。国際結婚のカップルカウンセリングを経験する中で、経済的安定と生活基盤の維持は、日本人が結婚生活に期待する要素のひとつとなっていると、カウンセラーとして強く実感しています。

そんな「終身雇用」の要素を前提としがちである日本人にとっても、近年は、離婚は珍しくない選択肢になってきていると感じます。特に、海外生活を送る中で、離婚という展開を迎えた家庭を、何度か目にしてきました。そして、離婚をするということ自体は、当事者はもちろん、こども達、果ては、その親族にとっても、なかなか心理的ストレスのかかることであると感じます。

また、「終身雇用」にとらわれずに離婚を検討することができる国際結婚カップルにとっても、離婚が大きな決断であることは間違いありません。精神的な負担や生活の大きな変化もさることながら、裁判や親権争いなど、傷が深まるばかりでなかなか決着がつかず、苦しんでいる方々もお見かけします。離婚をすると合意したけれど、その条件(財産分与、養育費、親権、面会権、こどもの居住地)で、折り合いがつかず、その苛立ちからコミュニケーションはさらに悪化をしているケースもあります。また、日本人女性の感覚では、「離婚します、子どもと一緒に、日本に帰ります」というのは当然の権利と思われがちですが、ハーグ条約の適用に従って、夫の合意なく子どもを日本に連れ帰る行為は、「連れ去り」と見なされるようになりました。また、母親が子どもの親権を取るのは必ずしも当然の権利とは見なされず、子どもを引き取ることを主張するのであれば、母親側の養育力として経済的基盤を示すことを求められる場合もあります。さらに、子どもにとっての最大の幸せは何であるかなどと争点になった時に、「両親ともに、子どものそばに住んでいること」と裁判所の判断が下り、母子で日本に住むということ自体が難しくなることもあります。

離婚するにせよ、しないにせよ、私がカウンセラーとして伝えたいのは、コミュニケーションの改善です。コミュニケーションの改善を試みて、離婚をしなくても満足のいく結婚生活や家庭生活が望めるのであれば、大きな成果でしょう。また、離婚をするにせよ、話し合わなくてはならないことがたくさんあり、合意に至るためのコミュニケーション能力が引き続き求められていきます。そして、離婚が決まっても、コミュニケーションは終わりません。特に、子どものことについてはひきつづき、連絡を取り合う関係は続いていく可能性があります。いずれにせよ、コミュニケーションを続けていかなくてはいけないのです。少なくとも、「毎回傷つけあわず、スムーズに用件を済ませたい」というのは、どなたも同じ思いではないかと思います。

コミュニケーションの改善を希望する方へ、私がお伝えしたいポイントを、下記の3つにまとめてみました。

1. 自分はどうしてほしいのか、それをどのように伝えたらいいか、工夫をしましょう

あなたが傷ついたり、いら立ちを覚えるのと同様に、相手もまた、あなたと同じように傷ついたと感じたり、反発をしてしまう生き物です。相手にも事情や意思があるのは当然ですから、相手が反論したり、感情的になっても、落ち着いて聞けるだけの余裕を作って、話し合いをする必要があります。また、あなたが「話が通じない」と感じているのであれば、伝えたいメッセージが相手にどのように受け取られているのか、確認してみましょう。当然、言葉にしていない、あなたの意図や気持ちは、相手には理解しようがありません。落ち着いて自分の状況を伝え、どうしてほしいのか協力を求めていかなくては、悪化することはあっても改善はしません。自分はどうしてほしいのか、どんなふうに伝えたら効果的なのか、何度か試してみることも大切です。

2. コミュニケーションがうまくいってないのであれば、少なくとも、それ以上悪化させない

感情的になってしまいそうな時、「もうこんな奴と話なんてしたくない」と投げ出したくなる時、大切なことは「少なくとも、悪化させない」ということです。毎回ケンカになってしまうパターンを振り返ってみましょう。悪化してしまう時の、サインを見つけてください。①声を荒げてしまう、②過去の不満も一緒にしてしまう、③相手をやっつけるのが目的の言い合いになってしまう…など、色々と気づかれることがあるでしょう。そのパターンが出始めた時に、話し合いを続けないことが大切です。「今は話し合ってもいい結果は出ないね」と冷静に打ち切ることも大切です。そして、どうやったら冷静に話せるのかを見つけてください。

3. コミュニケーションは双方向です

もしも、「相手が一方的に悪い」と感じているのであれば、冷静な第3者に相談をしてみましょう。暴力・暴言を伴うドメスティックバイオレンス等の支配関係をのぞけば、「相手が100%悪くて、自分にまったく落ち度のない」関係というのは、なかなかないと私は思います。もしかしたら、相手が不誠実なことをした過去があるかもしれません。しかし、相手の過去の行動に非があるからと言って、常に責め続けても、コミュニケーションの改善は望むことができません。あなたの傷を癒すことと、現在のコミュニケーションを成立させることは、分けて考える方が得策だと思います。

すべてのコミュニケーションは、双方向です。どこかに、話がこじれるパターンがあります。そして、それを解消するには、双方の協力が必要です。それでも、「自分は全く悪くなく、相手が自分の要求を呑むべきだ」と感じられる、感情的になるのがやめられないようであれば、それは、あなたの課題である可能性があります。さらにコミュニケーションを悪化させるのか、少なくとも、悪化をさせずに目の前のことを先に進められるかどうかは、あなたにかかっています。

なお、離婚をすること自体について、私が何らか価値判断を下すことはしません。それぞれの事情があり、決断を尊重します。実際、離婚をして当事者も子どもたちも、穏やかな生活を取り戻すことができた例をたくさん見ているからです。物理的な距離を設けて、ようやく、適切な心理的な距離をとることができた夫婦や親子もたくさんいます。そして、愛情はなくとも離婚はしないで、婚姻関係を続けるということに対しても、同じです。ただ、離婚をするにせよ、しないにせよ、コミュニケーションの改善を試みることは、役に立つことだと信じています。そのために、お役に立てることがあれば、カウンセラーとして本望です。

 

 

Suomi Fujimori

臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。