『ねずみとくじら』

ウィリアム・スタイグさく  せたていじ やく 評論社

海が大好きなねずみのエーモス。海の向こうはどんなところだろう?いつも海のことばかり考えている。昼間は自分で船を造り、夜は航海術を勉強した。独学である。私はこの本を 読むたびに建築家の安藤忠雄氏のことを思い出すのだ。安藤氏は建築関係の大学や専門学校へは行かず、独学で建築学を学んだ稀有な人である。大学の教科書を 友人に借りて読んだり、パルテノン神殿やガウディを見るために、世界建築行脚の旅をしたと聞く。

高校二年生の終わり、併設の大学へは受験なしで進学できたのだが、教育学部にこだわった私は他校へ進むため、内部推薦を辞退した。同時に私は高校の地理教師になる決意をした。高校では高1で現代社 会、高2で日本史、高3で世界史を全員が履習しなければならなかった。私は高3の選択教科で地理を選択した。そして大学受験では倫理政経で受験。高校社会における全ての分野を学習した。その中で、一番楽しく学習できたのは独学だった倫理政経である。浪人中に倫理の奥深さに目覚め、哲学を専攻したが、地理教師への夢は諦めていなかった。

大学1年の夏休みを皮切りに、四年間の長期休暇を全て旅にあて、世界中を一人で歩いた。私の中に世界を自分の 目で見て、自分の足で歩いたことを語る理想の地理教師像があった。私は大学4年間でできるだけたくさんの国へ足を踏み入れるという目標を立てた。学期中はとにかく働いて、旅行資金を確保した。当時はやっていた洋服やブランドバックには一切お金を使わなかった。友達付き合いも悪いほうだったと思う。

「旅 は遠いところから」を鉄則に、最初はアメリカ合衆国に上陸した。西から東へ、ときには北上、南下、アメリカの大地をただただ歩いた。南半球のオーストラリ アへは夏の気分で行ったので、皮膚があまり寒さを感じなかった。その後ヨーロッパへ。パスポートに㊞が押されるだけでうれしかった。言語、通貨、民族の異 なる国々を陸続きに渡り歩いたときには何とも言えない不思議な気分を味わった。最終学年の夏、自分の視界が温帯に位置する西側諸国に限定されていること気づき、最後の一年は東南アジアに目を向けた。赤道直下のシンガポール、そこを起点にマレー鉄道でマレーシアを縦断した。大学へ通った4年間、私は旅のことしか考えていなかった。

就職先が香港に決定した後、私にとって一番近くて遠い国であった韓国をお一人様卒業旅行として残しておいたのが、いけなかったのだろう。ちょっとしたアクシデントで、韓国は本当に遠い国になってしまった。

準備は万全を期したはずの私。いまだに夢の地理教師にはなれていない。賞味期限はまだ切れておりません。どこかで地理教師がお入用でしたら、遠慮なくお声をおかけください。ご連絡首を長くしてお待ち申し上げております。

2011年6月12日

ある日の日記より