『ねえ どっちがすき?』

安江リエ ぶん、 降矢奈々 え
年少版こどものとも 1998年9月号
福音館書店

「ねえ どっちがすき? ぴっかりめだまやきとほっこりたまごやき
中略
ねえ どっちがすき? じーじーウインナとじゅうじゅうハンバーグ」

リゾートホテルの朝食ピュッフェでこんな質問をされたら、ただ単に選択肢が2倍に増えるだけでなく、気分は10倍くらい幸せになる。それが人間の心理なのだ。
昨年9月より、娘の通う小学校が全日制になった。これまでは、午前部小学校と午後部小学校が校舎を共有し、学校活動を行っていたため、基本的に児童たち は校内では昼食を取れないことになっていた。校舎の建築構造を変えるわけではないので、調理室は存在しない。よって、全日制になっても、、日本のような給食を出すわけでなく、学校が一括して業者にお弁当を外注するというシステムだ。
新年度が始まる前に、学校は、児童たちのお弁当を委託する業者を検討するために、児童とその保護者を集めて、試食会を行った。私もその会に参加した。
試食会当日、どの業者も仕事を獲得するのに、必死なので、あからさまだが、「本日のメニュー」にとても力を入れ、それぞれのセールスポイントを懇切丁寧に説明していた。「うちに一票を!」まるで選挙戦のようだった。
私は比較的何でもおいしくいただけるほうなので、甲乙付け難かったが、B業者に決め、一票を投じた。

うちの娘たちは自分でお弁当を持参するので、購入希望は出さない。しかし、児童全員に毎月給食献立表たる注文メニューマークシートが配られる。それを見て、私は愕然とした。
日本の給食は同じものをみんなで食べる。「あれが好き」「これは嫌い」といったところで、メニューは変わらない。それしか食べるものがないのだ。食べるか食べないかの選択、あるいは後者の選択肢は与えられていないのかもしれない。
機内食ですら二者択一である。それが娘たちの学校のお弁当は、日替わりで、毎日4種類のメニューが用意されており、その中から、児童たちが好きなおかずを選んで、注文する。メニューの選び方によっては、毎日肉類、毎日麺類というような片寄った選択になる。
何でも経験。うちも一ヶ月だけ注文してみることになった。娘に選ばせたメニュー表を見ると、案の定、栄養のバランスなど全く考えておらず、自分の好きなものばかりを選んでいる。
いくら油分塩分控えめを謳おうが、好みの材料ばかり食していては、栄養の均衡は保たれない。
私は、早寝早起と、三度の食事が健康の基本、教育の原則だと考えている者なので、香港式のオーダー給食には賛同できない。
娘のクラスの9割はお弁当を注文している。自分で好きなおかずを選択したにもかかわらず、「嫌いだから」「味が口に合わない」と言って、残飯箱へ棄てる児童が毎日必ずいるらしい。

選べることの幸せを知らない者には、選べない現実を与えるべきである。
以上

2011年3月24日
ある日の日記より