『よるくま』

酒井駒子作
偕成者

『よるくま』、主人公のぼくが、夢の中で、よるくまという名の迷子の子熊に出会い、パジャマ姿のまま、よるくまとともにお母さん熊を探しに出かけるというお話だ。
絵本(空想)の中のそのまた夢の話なんて、大きい箱の中にもう一つ小さい箱が入っているみたいで、私は最初、容易にこの箱の中へ足を踏み入れることができなかった。

最近、うちに、おもしろい彼がやってきた。彼と知り合って、まだ2か月。しかし、私は彼に大きな親近感をもった。というのは、時折、彼が自分の夢を、私 に熱く語り聞かせてくれるからだ。夢といっても、「サッカー選手になりたい!」とか「宇宙飛行士になりたい!」といった将来の夢ではなく、彼が夜眠っているときに見る本当の夢である。
彼の夢の中では、私の家が舞台に、私が配役となって登場する場面もあるという。彼の夢は、一話完結ではなく、テレビ番組のようにある一定期間を隔てた後 にも続映されるというから驚く。更に彼のストーリーには起承転結があり、彼の巧みな語りも手伝って、こちらをわくわくさせる。その彼が、先日、「ぼく、この夢を書き出して、、本にしたいんだ」ぽつんとささやいた。私は、その瞬間、アメリカのベストセラー作家ダニエル・キースのことを思い出した。1927年 生まれのキースはいつかの対談の中で、自分の小説のインスピレーションを夢から得ていると答えていたからだ。

私は彼に、「君の将来が本当に楽しみだ」と真摯に伝えた。そして、彼は私に「ぼくも、ぼくの将来がとても楽しみだよ」と即答した。机上の学習を好まず、探究心が旺盛で、ハングリー精神をも備えている21世紀生まれの彼は、若干9歳。
こんな彼がいるのなら、日本の将来もまだまだ棄てたものではない。
Tくん、大きく羽ばたけ!

2009年5月10日
ある日の日記より