『おつきさまこっちむいて』

片山令子文
片山健絵

2006年3月号『ちいさなかがくのとも』福音館書店
冬になると、だんだん日が短くなる。うちの二人の娘さんたちは、雨の日も、風の日も、SARS(サーズ)の時にだってかまわず、毎日外に出て元気に遊 ぶ。彼女たちはこれを毎日の日課としている。小さい頃は、私も一緒に出かけ、公園で本を読んだり、近所のお母さんたちとおしゃべりしたりして過ごしていた けれど、いつからか、娘たちは自分たちだけで出かけるようになっていた。
「行ってきまーす!」今日も元気に駆け出して行った二人。「暗くなったら、帰ってくるのよー」と私は送り出す。

6時を過ぎると窓の外はもう真っ暗。日もとっぷりと暮れているのに、鉄砲玉の娘たちはまだ帰って来ない。(日が沈んだら、帰って来いと言っておいたのに、、、)日没後30分が経過した。私は夕飯も作り、お風呂にも入り、ただひたすら待っていた。
7時になった。遅い。遅すぎる。いくらなんでもこんなに遅くなるなんて、おかしい。心配で居ても立ってもいられなくなった私は、表へ飛び出した。娘たち がよく行く公園目指して。しかし、会社帰りの人達が多く、エレベーターがなかなか来ない。こんなときに!いらいらする気持ちを抑えながら、階下へ。
いた!いつもの公園に。娘たちは、スポットライトを浴びながら、キラキラ遊んでいた。
「ごはんですよー」

子どもの頃、夜道を走っても走っても、私の後を、音もなく追いかけてくるお月さまが、不思議で、怖かった。こんなにネオンが明るい公園で、娘たちは日の短さを肌で感じることなく大きくなっていくのだろうか。
空を見上げると高層ビルの間で、申し訳なさそうに光るお月さまがあった。
ああ、明るい大きな大きなお月さまが懐かしい。

2009年12月6日
ある日の日記より