『うんちがぽとん』

『うんちがぽとん』   え・ぶん アロナ・フランケル
やく さくま ゆみこ

次女、一歳半。まだおむつはとれていない。この時期、彼女は『うんちがぽとん』という絵本が大好きだった。朝となく昼となく一日10回以上、「読んで!読んで!」とせがんできた。まるで排便行為が彼女の興味の100%を占めているかのように。
二歳になっておむつがとれた彼女は、外出時も普通のパンツをはいて出かけるのが常だった。この日は、二才の定期検診。午前中にかかりつけの病院で用を済ませ、帰り道でおにぎりを食べた。外出ついでに買い物をする予定でいたので、北角(ノースポイント)の市場で下車した。市場に向かう途中の横断歩道前、娘の様子が尋常でないことに気が付いた。つま先立ちしている。もしや…。一抹の不安はこういうときに的中する。「はづき、うんち?」と懐疑心たっぷりの口調で聞いてみた。娘は無邪気に「うんち、でちゃった!」と微笑んでいる。「いいよ、いいよ、出てしまったものは、引っ込められないからね。パンツの替えはちゃんと持ってきてるから、トイレへ行こう。」と、前方の横断歩道を渡り始めた。中央まで進んだところで、信号が点滅し始めた。私は条件反射的に、娘の手を握って走った。その瞬間、道路に何かが落っこちた。落ちたものは娘のうんちだった。パンツの脇から、コロコロと横断歩道の真ん中に転がり落ちたのだっ た。後続の女性は、「おっ」と言いながら、笑顔でよけてくれた。横から車が飛び出してきたので、私たちは大慌てで対岸にたどり着いた。たった数メートルの 道幅しかない横断歩道が、きょうはとてつもなく長く思えた。渡り終えた後も私たち親子は「葉月のウンチどこ?」「あーっ、ひかれそう!」「おー、セー フ。」と実況中継しながら、遠くから娘の分身を眺めていた。
これが、うちの「うんちがぽとん」のお話です。

2003年9月11日 ある日の日記より