第1回:乳がん予防早期発見の重要性

マチルダ国際病院外科医 Dr. Hung Wai Ka

乳がん予防 早期発見の重要性

この十数年、乳がんに対する注目が年々と高くなってきている。なぜなら乳がんを患う女性の数が上昇傾向にあるからだ。香港で2015年に乳がんを患った女性の数は3900人。1993年の1152人と比べると、3倍にもなっており、平均すると1日に約10人の人が乳がんと診断されているということだ。この中で死亡数は637人。女性のがん患者では乳がん患者が最も多く、がん患者の26.1%を占めている。

 

どんな病も初期に対処する方が治癒する可能性が高くなるが、得に乳がんはそうである。

 

 

若い母親の乳がん治療に対する疑問

今しがた私の診察室に駆け込んできたレイという女性は、まだ30歳を過ぎたばかりの典型的なビジネスウーマン。幼い子どもが既に一人いるが、近い将来もう一人産みたいと考えている。

先日乳房に異常を発見し、内科から私のところに回されてきた。検診の結果、彼女は乳がんの第2期を患っていることが明らかになった。まだ早期の内に入るが、やはり彼女のショックは隠しきれない。これからの治療に対する漠然とした不安や、今後の妊娠出産は可能かという疑問。。。

 

乳がんは4期に分かれる。第1期のサイズは2cm以下でリンパ節に転移していない場合。第2期は2cm以上でリンパ節への転移している場合。第3期は腫瘍面積が更に大きく、より多くのリンパ節への転移がある場合。 第4期は遠隔臓器、例えば肝臓、骨、または肺などに転移してしまっている場合である。

もし 定期的に乳房の検査をしていたとして、第1期(または0期とも呼ばれる極めて早期の乳がん)で乳がんを発見した場合、治療は比較的簡単となる。癌の部分を切除した後、50%の確率で化学療法をしなくて良くなると同時に5年生存率も90%ととても高い。切除手術でも乳房の大部分は残せるため、乳房の再建術の必要性も低くなる。

 

香港では第2期以上での発見患者が最も多い

レイのようなケースは香港で最もよく見られる典型的なケースである。定期健診を受けず、乳房の外観に変化を見つけたり、触ってしこりがあってから医者にかかるケースであるため、 発見時はすでに第2、3期であることが多い。中にはそれでもなかなか医者にかからず、末期で発見する人もおり、遅ければ遅いほど治療の難易度は高くなってしまう。

レイの場合は第2期で発見されたため、まずは切除手術から治療が始まる。その後補助的な科学治療を行う。乳がんの切除手術に伴うリスクは低く、術後の体の功能にはほぼ影響はせず、治癒する可能性も高い。5年生存率は70%に達する。だが、乳房を切除しなくてはいけないため、外観上に影響してくることが問題となる。

 

現在のがん治療は昔と比べると随分変わり、専門家が互いに協力しあい、治療することが必要とされて来ている。例えば、外科医と整形外科医が一緒に手術室に入れば、腫瘍の切除後、乳房の再建術を希望する患者さんである場合、すぐに再建術を行うことができる。

 

乳房の再建術は2通り方法がある。一つは患者の下腹部の脂肪を乳房に注入する方法で、脂肪組織がほぼ同じであることから自然な仕上がりになるが、下腹部には長い傷跡が残る。もう一つはシリコンを入れる昔ながらの方法である。

レイの場合、化学治療は必須となってくる。手術は局部治療である為、術後に化学治療で全身の再発を防止、または身にこぼれ落ちている可能性のある微小転移にアプローチする必要があるからだ。

しかし、化学治療は卵巣の働きに影響を及ぼす可能性がある為、今後の生育に影響することもある。

こうした気になる点もあるが、新しい化学治療薬の副作用は大幅に減った為、患者は以前より安心して治療に挑めるようになって来た。

 

乳がんは早期治療をすることが一番だが、万が一後期で治療をすることになった場合は、まず化学治療、ホルモン治療、または分子標的治療を行い、腫瘍が縮小した後に切除手術をすることが必要になることも少なくない。治療期間が長くなるのと、切除が必要になる可能性が大幅に高くなると同時に、治癒する可能性も大幅に減る。

 

乳房は女性美の象徴である。不安や葛藤を避けて通ることはできないが、定期検査を受け、異常が見つかった場合は早期治療することが、この癌に打ち勝つ最も良い策略と言えよう。